ベーシストなら多くの方がアウトボードプリアンプを導入していることと思います。
その大きな理由は、エレキベースでライブを行う場合、アンプ出力をマイキングして取得された信号よりも、DI
(ダイレクトボックス)
から取得された信号の方がミックスされる割合が多いことが挙げられます。
すなわち、自身が意図したエレキベースの音色を外音として会場に出力するためには、DI
より以前にプリアンプを噛ませて意図した音色を作り出す必要があるということができます。
そのため、多くのベーシストがアウトボードプリアンプを機材に組み込んでいます。
しかし、そこでベーシストを悩ませるのは、アウトボードプリアンプを組み込んだ際のルーティングです。
今回は、アウトボードプリアンプを組み込んだ際のルーティングについて解説していきます。
このルーティング解説はアウトボードプリアンプだけでなく、アクティブベースのような内蔵プリアンプを導入している場合にも役立つことと思います。
是非この記事を活用して、理想の音色を追い求めていって頂ければ幸いです。
ルーティング例
ここでは具体的なルーティング例をいくつか挙げていくので、自身の現状のルーティングと照らし合わせながら読み進めてもらえるといいと思います。
もし試したことがないルーティングがあれば、ぜひ試して音色の変化を実感してみてください。
ちなみにルーティングの正解は人や機材によって変わってくるので、カッコいい音色を外音として会場に鳴らすことができればそれが最適解です。
以降からアウトボードプリアンプと内蔵プリアンプを「プリアンプ」と表記します。
アンプ内蔵のプリアンプについては「アンプ内蔵プリアンプ」と表記を区別します。
また、「I. DI 側の信号」と「II.
アンプ出力をマイキングした信号」というように区別します。
最終的に「I」と「II」がミックスされて外音になるわけですが、前提として「I:II
= 8:2」とします。
外音に対しては「I」が支配的であり「II」は補助的な位置づけ。
中音に対しては「II」のみ (正確にはマイキング前の「II」)
が支配しているという前提で解説を進めていきます。
今回ルーティング例で使用するプリアンプは最も国内で流通しているといっても過言ではない
TECH21 Sansamp Bass Driver DI V2 とし、ダイレクトボックス (以降 DI) は定番の BOSS DI-1 とします。
サンズアンプで親しまれる大定番ベース用プリアンプ「Bass Drive
DI」のバージョン 2 がついに登場。旧型には無かった MID
コントロールを新たに搭載。
3段ゲイン・セレクター、オート・パワー・オフ、ファンタム・パワー自動切換、グラウンド・リフト機能など多彩な装備した、高性能アクティブ・ダイレクト・ボックス。
① プリアンプ → DI → アンプのインプット
何も考えずにすべての機材を接続すると、このルーティングになると思います。
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I. DI 側の信号
プリアンプから出力された信号が DI に入力され、PA 卓に送られます。
II. アンプ側の信号
プリアンプから出力された信号が DI に入力され、DI
のパラレルアウトプットからアンプのインプットに入力されます。
その後アンプ内蔵プリアンプ、パワー部を経てキャビネットから出力された信号がマイキングされ
PA 卓に送られます。
この場合、プリアンプだけでなくアンプ内蔵プリアンプを経由してしまうため、音色に影響が出ます。
しかし、アンプ内蔵プリアンプを調整することで中音を整えることができるので、プリアンプの設定を変更する必要がありません。
そのため、DI
側の信号を一切変更せずに中音を整えることができることがメリットとなります。
中音はバンドメンバー全員の演奏のしやすさに関わってくるので、低音が回りすぎている場合はアンプ内蔵プリアンプで
LOW をカットしていくといいでしょう。
このとき、アンプ内蔵プリアンプのイコライザはフラットの状態から調整していくことをおススメします。
まとめ
メリット: 「I」を一切変更せずに中音を整えることができる。
デメリット: 「II」に対してアンプ内蔵プリアンプの影響が出る。
中音と「II」にはアンプ内臓プリアンプの影響が出ますが、外音は「I」が支配的であるため、このルーティングでも外音への影響は少ないと考えられます。
個人的には、キャビネットシミュレータを搭載していないプリアンプの場合は、最良の選択なのではないかと考えています。
② プリアンプ → DI → アンプのリターン
このルーティングは少し前に流行ったものだと思います。
ちなみに、このルーティングは全てのライブハウスで許可されているわけではないので、事前に
PA さんの承諾を取っておくことをおススメします。
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I. DI 側の信号
プリアンプから出力された信号が DI に入力され、PA 卓に送られます。
II. アンプ側の信号
プリアンプから出力された信号が DI に入力され、DI
のパラレルアウトプットからアンプのリターンに入力されます。
その後アンプ内蔵パワー部を経てキャビネットから出力された信号がマイキングされ
PA 卓に送られます。
この場合、アンプ内蔵プリアンプの影響を受けることなく、プリアンプの音色をキャビネットから出力することができます。
しかし、中音を整える際はプリアンプのイコライザを調整する必要があるため、DI
側の信号にも影響が出てしまいます。
そのため、バランスの良い中音と外音の構成が非常に難しくなります。
まとめ
メリット: 「II」にアンプ内蔵プリアンプの影響が出ない。
デメリット:
中音を整える際はプリアンプの設定を変更する必要があり「I」に影響が出る。
プリアンプを操作して中音を整えるたびに「I」と「II」の両方に影響が出てしまうため、現場での音作りが非常に難しくなります。
個人的には外音と中音のコントロールが難しいので、あまりおススメできないルーティングです。
③ プリアンプ → DI + ベース → アンプのインプット
このルーティングでは、プリアンプのパラレルアウトプットを利用します。
まずはベースの信号をプリアンプに入力します。
プリアンプのアウトプットから出力される信号を DI
に入力し、パラレルアウトプットから出力される信号をアンプのインプットに入力します。
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I. DI 側の信号
プリアンプから出力された信号が DI に入力され、PA 卓に送られます。
II. アンプ側の信号
プリアンプのパラレルアウトプットから出力された信号がアンプのインプットに入力されます。
この場合、プリアンプの影響を受けることなくアンプ内蔵プリアンプで音色をコントロールすることができます。
そのため、中音についてはアンプによって音作りを行う必要があるので、会場やスタジオに設置してあるアンプごとに最良の設定を見極める必要があります。
しかし、アンプヘッドまで持ち込む場合は中音と外音の両方を意図した音色に設定できるため、非常に効果的なルーティングです。
このルーティングで注意しておきたいところはプリアンプ以後に接続したエフェクターについては中音に反映されないということです。
音色への影響度が高いエフェクターを接続する場合は、接続順を考慮する必要があります。
まとめ
メリット:
プリアンプ、アンプ内蔵プリアンプの性能をそれぞれの影響なく完全に発揮できる。
デメリット: エフェクターの接続順に注意する必要がある。
個人的にはアンプの持ち込みまでできて、あまり音色に影響の出るエフェクターが少ない場合は有効なルーティングだと考えています。
最近ではプリアンプに頼りがちですが、アンプそのもののサウンドはやはり魅力的です。
使用機材がプリアンプのみであれば、ベストなルーティングではないでしょうか。
キャビネットシミュレータを使用する場合のルーティング
ここでは、最近流行りのキャビネットシミュレータを使用する場合のルーティングについて述べていきます。
キャビネットシミュレータを使用した際にアンプ側の音抜けが悪くなっている場合は、試してみる価値があると思います。
今回はキャビネットシミュレータとして、HOTONE OMNI IR CAB IR Loader を例に解説していきます。
インパルス・レスポンス通称IRをベースとしたキャビネットシミュレータ HOTONE / OMNI IR。40 種の高品位IRギター /
ベースキャビネットをミニサイズで実現。よりリアルなキャビシミュ・サウンドを手軽にペダルボードへ組み込めます。
④ プリアンプ → キャビシミュ → DI + プリアンプ → アンプのインプット
このルーティングでは、キャビネットシミュレータのパラレルアウトプットを利用します。
キャビネットシミュレータのアウトプットから出力される信号を DI
に入力し、キャビネットシミュレータのパラレルアウトプットから出力される信号をアンプのインプットに入力します。
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I. DI 側の信号
キャビネットシミュレータから出力された信号が DI に入力され、PA
卓に送られます。
II. アンプ側の信号
キャビネットシミュレータのパラレルアウトプットから出力された信号がアンプのインプットに入力されます。
この場合、中音はキャビネットシミュレータの影響を受けません。
まとめ
メリット: アンプ側にキャビネットシミュレータの影響が出ない。
デメリット: 特になし。
「II」にキャビネットシミュレータを通した音色がのってしまうと、結果的にキャビネットを
2 回通過することと同義になるため、音がこもりがちになってしまいます。
このような状況を回避するために、キャビネットシミュレータを使用する場合はキャビネットシミュレータのパラレルアウトを活用することを強くおススメします。
最後に
今回は、アウトボードプリアンプを組み込んだ際のルーティングについて解説させて頂きました。
このルーティング解説はアウトボードプリアンプだけでなく、アクティブベースのような内蔵プリアンプを導入している場合にも役立つことと思います。
もちろん、ルーティングはこの限りではありません。
是非この記事を活用して、理想の音色を追い求めていって頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
サンズアンプで親しまれる大定番ベース用プリアンプ「Bass Drive
DI」のバージョン 2 がついに登場。旧型には無かった MID
コントロールを新たに搭載。
3段ゲイン・セレクター、オート・パワー・オフ、ファンタム・パワー自動切換、グラウンド・リフト機能など多彩な装備した、高性能アクティブ・ダイレクト・ボックス。
インパルス・レスポンス通称IRをベースとしたキャビネットシミュレータ HOTONE / OMNI IR。40 種の高品位IRギター /
ベースキャビネットをミニサイズで実現。よりリアルなキャビシミュ・サウンドを手軽にペダルボードへ組み込めます。
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