エフェクターボードやラックシステムを運用する際どんなに綺麗に配線を行っても、ギータ―やアンプと接続する入出力部の配線が煩雑になってしまいがちです。
また、たまにしか使用しないエフェクターを間に配置するために、組み上げたシステムを配線し直すことも非常に大変です。
そんな煩雑になりがちな配線を綺麗にするためには、パッチベイがあると非常に便利です。
入出力部の配線を整理するだけなら、ジャンクションボックスなどでも十分ですが、パッチベイはジャンクションボックスよりも拡張性に優れており、利便性の追求にも期待できます。
今回は、私が普段使用しているパッチベイの ART T Patch
について紹介していきます。
ART T Patch
ラックマウントされた ART T Patch |
ART T Patch
はパッチベイとしては珍しく、小型の筐体に収まっていることが大きな特徴です。
パッチベイといえばラックマウントを前提にしているものが多く、大量の入出力を備えている代わりに大型のものが多くなっています。
そんななか、ART T Patch はエフェクターボードやラックシステム、机上の DTM
環境にも配置できる大きさです。
価格も 4,000
円前後とお求めやすくなっており、導入しやすい点も評価できます。
ART T Patch はコンパクトサイズのパッチベイです。ノーマルとハーフノーマル接続をスイッチにて選択可能。
パッチベイとは
ラックシステムを構築したことがなければ、そもそもパッチベイという機材に馴染みが薄いと思います。
パッチベイについて簡単に要約すると配線をパッチベイに集中させることによって配線を容易に行うための機材になります。
パッチベイの接続方法は、大きく分けると以下の 3 種類があります。
今回の説明の前提として、背面 (機器側)
は上下段ともに配線されているものとしますが、上下段片側のみの配線でも使用できます。
また、便宜上信号の流れを矢印で示しますが、実際にはハーフノーマル以外どちらの向きでも使用できます。
ストレート接続 (ART T Patch 非搭載)
ストレート接続では、前面に配線していない状態では信号は流れず、前面に配線した場合にのみ信号が流れます。
パッチベイのストレート接続 |
ノーマル接続
ノーマル接続では、前面に配線していない場合は背面の配線同士が結線され、信号が流れます。
前面に配線した場合は、ストレート接続同様に信号が流れます。
パッチベイのノーマル接続 |
ハーフノーマル接続
ハーフノーマル接続では、ノーマル接続同様に前面に配線していない場合は背面の配線同士が結線され、信号が流れます。
前面の上段のみに配線した場合は、信号が分岐されます。
前面の下段または両側に配線した場合は、ストレート接続同様に信号が流れます。
パッチベイのハーフノーマル接続 |
ストレートとノーマル、ハーフノーマル接続の切り替えは通常スイッチで行うことができ、その使用目的によって適切な接続方法を選択します。
ART T Patch もスイッチでノーマルとハーフノーマル接続を変更可能 |
ART T Patch
にはストレート接続の機能が搭載されていないので、この点には注意が必要です。
ART T Patch の接続例
ART T Patch はパッチベイなので、いろいろな接続方法と使用用途があります。
いくつか接続例を紹介するので、自分なりに使用方法を考えてみてください。
ジャンクションボックス的な使用方法
ART T Patch
にはストレート接続機能が搭載されていないので、ジャンクションボックス的な使用をする場合は注意が必要です。
下記のように 2
つのチャンネルを占有すれば安全にジャンクションボックス化が可能です。
2 ch を占有したジャンクションボックス化 |
下記のように 1 ch のみでもジャンクションボックス化が可能ですが、前面に配線しない状態でエフェクターの電源を入れてしまうとエフェクター内で閉回路が形成されてしまうので、フィードバックが発生してしまい最悪故障の原因となります。
1 ch のみでのジャンクションボックス化 |
前面に配線してからエフェクターの電源を入れるように気を付ければよい話ですが、忘れてしまうこともあると思うのでおススメできません。
もちろん、ストレート接続が可能なパッチベイの場合は何の問題もなく 1 ch
のみでジャンクションボックス化できます。
センドアンドリターン的な使用方法
ノーマル接続を利用することで、下記のようにセンドアンドリターン的にパッチベイを使用することができます。
センドアンドリターン的な使用方法 |
通常時は前面には配線せずにエフェクターボードを運用し、追加のエフェクターが必要になった場合に前面にエフェクターを追加で配線することで、既存の配線を崩さずにエフェクターを追加することができます。
私の場合、ART T Patch の 3 ch と 4 ch
をセンドアンドリターンとして利用していました。
3 ch はエフェクトシステムの先頭、4 ch
はエフェクトシステムの最後尾に配線しておくことで、様々な状況に対処することが可能です。
信号の分岐にも使用可能
ハーフノーマル接続を利用することで、下記のように信号の分岐が可能です。
ハーフノーマル接続では信号の分岐が可能 |
新たなエフェクターに信号を分岐することも可能ですし、先頭に配置することでドライ音を残すこともできます。
また、チューナなどを接続する場合にも効果的です。
もちろん接続順の容易な変更も可能
もちろんパッチベイならではの接続順の容易な変更も可能です。
接続順の容易な変更はパッチベイの得意技 |
あらかじめすべてのエフェクターの IN と OUT
を背面に接続しておくことで、前面に配線を加えるだけで接続順の変更が可能です。
最後に
今回は、私が普段使用しているパッチベイの ART T Patch
について紹介させて頂きました。
エフェクトシステムの配線は煩雑になってしまいがちですが、パッチベイを利用することで綺麗に配線をまとめられるだけでなく、拡張性を持たせることも可能です。
エフェクターボードやラックに組み込む際は足が邪魔になりますが、前面パネルを外せばゴム足をスライドさせて取り外すことができます。
ART T Patch のゴム足は取り外し可能 |
パッチベイがあると配線の面で非常に便利ですので、この機会に導入を検討してみては如何でしょうか。
コンパクトサイズの ART T Patch は非常におススメです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ART T Patch はコンパクトサイズのパッチベイです。ノーマルとハーフノーマル接続をスイッチにて選択可能。
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